駅前やショッピングモール、住宅街など、さまざまな場所で見かけるスターバックス。
決して安いとはいえない価格帯でありながら、店内には多くの人が集まり、季節限定商品が登場すればSNSでも話題になります。
スターバックスが世界中で支持されているのは、コーヒーがおいしいからだけなのでしょうか。
結論からいうと、スターバックスの強さは、コーヒーそのものだけでなく、店舗で過ごす時間や商品を選ぶ体験までブランド化したことにあります。
この記事の結論
スターバックスは「飲み物」「空間」「参加体験」「習慣化」を一つにつなげることで、価格だけでは比較されにくいブランドをつくりました。
スターバックスはどれほど大きなブランドなのか
まず、スターバックスの事業規模を見てみましょう。
| 項目 | 実績 |
|---|---|
| 2025年度の世界売上高 | 約372億ドル |
| 世界の店舗数 | 40,990店舗(2025年9月末時点) |
| 日本国内の店舗数 | 2,116店舗(2026年3月末時点) |
| 米国直営店売上高に占めるRewards会員経由の比率 | 60%近く(2025年度) |
これほどの規模に成長した背景には、店舗数を増やしただけでは説明できない、緻密なブランド戦略があります。
ここからは、スターバックスが世界中で選ばれる理由を、マーケティングの視点から3つに分けて見ていきます。
理由① コーヒーではなく「居場所」を売った
スターバックスを象徴する考え方の一つが、「サードプレイス」です。
サードプレイスとは、自宅を第一の場所、職場を第二の場所としたとき、その間にある第三の居場所を指します。
スターバックスも、自社の店舗を、人と会ったり、休憩したり、地域とのつながりを感じたりできる場所として位置づけています。
一般的なカフェ
飲み物を買う場所
スターバックス
自分らしく過ごせる場所
この違いは、価格の受け止め方にも影響します。
飲み物だけを比較すれば、「少し高い」と感じる人もいるでしょう。
しかし、落ち着ける空間、接客、音楽、内装、ブランドへの安心感まで含めると、顧客が購入しているものはコーヒーだけではなくなります。
スターバックスは、コーヒーの価格に「そこで過ごす体験」の価値を加えた。
つまり、スターバックスは商品単体で価格競争をするのではなく、空間を含めた体験によって比較されにくいブランドをつくったのです。
理由② カスタマイズによって「自分の商品」に変えた
スターバックスでは、ミルクの種類、シロップ、ホイップクリーム、ソース、温度などを、自分の好みに合わせて変更できます。
このカスタマイズは、単なる追加サービスではありません。
マーケティングの視点で見ると、顧客を商品の購入者から、商品づくりへの参加者に変える仕組みと考えられます。
選ぶ
メニューから好みの商品を選ぶ
変える
ミルクや甘さなどを調整する
共有する
自分の注文方法をSNSなどで伝える
同じ商品でも、自分で選択を重ねるほど、「自分のためにつくられた一杯」という感覚が生まれやすくなります。
さらに、おすすめのカスタマイズや注文方法がSNSで共有されることで、顧客自身が新しい楽しみ方を発信する流れも生まれます。
企業が一方的に広告を出すだけではなく、顧客の注文そのものがコンテンツになり、口コミにつながりやすい構造です。
マーケティングのポイント
選択肢を与えることで、顧客は商品を「買った」のではなく、「自分でつくった」と感じやすくなります。
理由③ 限定商品とアプリで「また行く理由」をつくった
スターバックスでは、季節に合わせて新しいフラペチーノや期間限定商品が登場します。
桜、桃、いちご、ハロウィン、クリスマスなど、商品が季節のイベントと結びついていることも特徴です。
限定商品には、「今しか飲めない」という希少性があります。
そのため、通常の商品だけでは来店しなかった人にも、店舗を訪れるきっかけが生まれやすくなります。
季節限定商品を知る
↓
店舗やアプリで確認する
↓
購入して写真を撮る
↓
SNSで共有する
↓
投稿を見た人が店舗を訪れる
これは、スターバックスの限定商品が話題から来店までをつなぐマーケティング装置として機能しやすい構造を持っていることを示しています。
さらに、アプリやStarbucks Rewardsが、話題を一度きりで終わらせず、継続的な利用につなげています。
モバイルオーダー、事前決済、Starの付与、会員向け情報などが一つにつながり、購入までの手間を減らしています。
スターバックスの公式発表によると、2025年度には、Starbucks Rewards会員による利用が米国の直営店売上高の60%近くを占めました。
これは、Rewardsプログラムが単なるポイント制度ではなく、顧客との継続的な関係を支える重要な基盤になっていることを示しています。
スターバックスの強さは「すべてがつながっている」こと
スターバックスの施策を一つずつ見ると、特別に珍しいものばかりではありません。
- 居心地のよい店舗をつくる
- 商品をカスタマイズできるようにする
- 季節限定商品を販売する
- アプリやポイント制度を提供する
- SNSで話題になりやすい商品を開発する
似たような施策を実施している企業は、ほかにもあります。
それでもスターバックスが強いのは、これらが別々に存在するのではなく、一つの顧客体験としてつながっているからです。
スターバックスの顧客体験
知る
↓
行ってみる
↓
自分好みに注文する
↓
店舗で過ごす
↓
SNSで共有する
↓
アプリを通じて再び訪れる
この流れが繰り返されることで、来店は一度きりの買い物ではなく、生活の中の習慣へと変わっていきます。
ただし、ブランドは一度つくれば終わりではない
スターバックスも、常に順調だったわけではありません。
モバイル注文の拡大や店舗運営の複雑化が進むなか、スターバックスは顧客とのつながりや、店内で過ごす体験を改めて強化する必要性に直面しました。
そこで現在は、「Back to Starbucks」という方針を掲げ、コーヒーの品質、バリスタによる接客、居心地のよい店舗づくりを改めて重視しています。
便利さを追求するだけでは、スターバックスらしさは維持できない。
アプリやモバイルオーダーによる効率化と、人が接客する店舗体験。
その両方をどう成立させるかが、今後のスターバックスにとって重要なテーマになりそうです。
スターバックスから学べるマーケティングの本質
スターバックスの成功から学べるのは、商品を宣伝するだけでは強いブランドになれないということです。
重要なのは、商品を購入する前から、購入した後までの体験を一貫して設計することです。
スターバックスから学べる3つのこと
- 商品ではなく、顧客が得られる体験を考える
- 顧客が参加できる余白をつくる
- 再び利用する理由を仕組みとして設計する
まとめ:スターバックスはコーヒーを「体験」に変えた
スターバックスが世界中で支持される理由は、コーヒーがおいしいからだけではありません。
- 自宅でも職場でもない居場所をつくったこと
- カスタマイズによって顧客を商品づくりに参加させたこと
- 限定商品とアプリで再来店の理由をつくったこと
この3つがつながることで、スターバックスは単なるコーヒーチェーンではなく、日常の中で繰り返し選ばれるブランドになりました。
スターバックスが販売しているのは、一杯のコーヒーだけではありません。
その場所で過ごす時間、自分で選ぶ楽しさ、誰かに共有したくなる体験まで含めて販売している。
それこそが、価格や商品だけでは簡単にまねできない、スターバックス最大の強さなのです。
参考資料
- Starbucks Corporation「Starbucks Reports Q4 and Full Fiscal Year 2025 Results」
- Starbucks Corporation「Starbucks Is Back, Turning Momentum Into Long-Term, Sustainable Growth」
- Starbucks Stories「Reclaiming third places: our bold vision for community stores」
- Starbucks Stories「How Back to Starbucks is reshaping every aspect of the coffeehouse experience」
- スターバックス コーヒー ジャパン「沿革(2026年度)」




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